第711回 平塚市倫理法人会経営者モーニングセミナー
テーマ:『 信用金庫の役割 』
講話者:平塚市倫理法人会 会員 平塚信用金庫 会長 石崎 明 氏
まずは前置きとして最近の気候問題についてお話されました。経済活動で放出したCO2ガスによる地球温暖化が問題になっています。それにより自然災害が多くなっている、昔は無かった「線状降水帯」と言う言葉が出てくるようになった。先端を行く世界の企業は環境問題にも取り組んでいる。日本企業も他人ごとではなく、SDGsの取り組みを始め、化石燃料ではなく再生可能エネルギーに変えていく事も必要だろう。また来年度からのインボイス制度を理解するなど、経営者であれば新しい仕組みを取り入れないとグローバルな世界から取り残されると諭されました。
本題です。
金融機関のうち、銀行と信用金庫の違いは何でしょう。私たちは金融機関としては銀行がすぐに思い付きますが、銀行は株式会社でその意義は配当性向にあるのだと。つまりは利益を上げて株主に還元する、この事をしないと企業としての価値を評価されない。歴史的にも両替商、を起源としています。江戸時代になり金貨・銀貨などの貨幣制度になると、武士階級に貸し出してどんどん大きくなりました。
一方で信用金庫は協同組織、その歴史は鎌倉時代の無尽講(むじんこう)に遡る。その後の室町時代の頼母子講(たのもしこう)が発展したもの。講というのは資金や、当時はお米を出し合って、困っているところ、足りないところに配るという助け合い、相互扶助、互助組織からスタートしている。明治維新を経て産業発展という国策の為、大企業は国が資金を融資して助けたが、農民を含めた小さな事業者、商工業者、中小の商売人、一般庶民は放っておかれ、必要な資金を高利貸等から調達するという問題が出てきた。そこで何とかしたいという機運が産まれ、明治25年静岡県掛川市で信用組合がスタートした(現在は島田と合併したが現存している)。元々は会員しか利用できなかったが、大正6年に市街地信用組合法の制定(産業組合法の一部改正)により、一般市民から預金を集められるようになった。戦争を挟んで戦後の混乱期、GHQにより再び会員間でのみの取引と制限されてしまったが、昭和26年の信用金庫法により653か所の信用組合が改組され、全国561か所の信用金庫として再スタートした。信用金庫同士もやはり助け合い精神なので、バブル崩壊時の危機も顧客に迷惑を掛けない様に潰さない様に合併等でしのぎ、現在は250ほど存在しているのです。
信用金庫の特徴は労働組織、地域密着、中小企業を相手にする、である。中小企業は社員300人以下、資本金9億以下が対象で、それを越えたら取引は卒業してもらう。
平塚信金の経営理念:①信頼される信用金庫に成ろう、②地元になくてはならない信用金庫に成ろう、③魅力的な信用金庫に成ろう、である。平塚信用金庫は8市1町に支店を持ち、コロナ禍の3年間で2400件400億のコロナ融資を実施。従来の事業では立ち行かなくなった為の新しい事業計画の59件申請の内、28件を採択した。これは信用金庫の役割である金融仲介機能、送金・資金決済機能、課題解決機能、による。特に課題解決機能として、企業が気付いている、気付いていないに関わらず課題等を提案・改善して、事業者に元気になって貰う。ここの部分はこれからも重視していく事業です。地域を守る、町のベストパートナーとして未来永劫、地域に責任を果していくところに価値を見出しているのです。
昭和7年に県内4番目の市政として平塚市がスタートし、今年市政90周年だが、それと同じ平塚信用金庫も今年90周年である。昭和恐慌時代に市議が中心となって見附台で前身の平塚信用組合が出来たのが始まり。今回90周年記念事業として文化・芸術ホールのネームとして採択された、「ひらしん平塚文化芸術ホール」が落成した。地域住民のよりどころとした施設で在りたいし、また子どもの将来に役立つ基金に寄付する事も考えている。
石崎会長は48年前に入社してから1年後、目標であった預金500億を越え、現在は5715億円の規模となっている。これは地域の皆様のおかげである。56歳で理事となり、7期14年に亘り理事を続けてきたが令和4年6月27日の総代会で役員を満了し会長職に転じた。現在71歳、半世紀近く関わっている。その間、どういう舵取りをして来たのか。今考えると経営者として迷ったら経営理念に戻る。自分の考えている事は本当に理念に沿ったものか?を常に考えて行動・決断する。勿論、自分一人で決めるのではないが、地域の人の役に立っているのか、自分達だけが儲けるのではないか、常に考えてきました。そしてそれは全ての経営者・組織に言える事です。
「まとまりのない話で恐縮ですが、、、」と謙遜されていましたが、示唆に富む内容で石崎会長の人柄が現れた素晴らしい講演でした。倫理法人会のMSでは元気を貰える、多少の事が有っても挨拶や講話をすると自分の気持ちを切り替えられる、とのお言葉も戴きました。
会員 佐藤 研 記
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