第683回 平塚市倫理法人会 経営者モーニングセミナー
テーマ:『 闘病中でしか体験出来なかった境地 』~創業67年の歴史を終えて~
講話者:横浜みなとみらい 倫理法人会 監査(一社)Passive Window Japan 代表理事 橘 重行 氏
本日講話の橘さんは、昨年10月に講話予定を体調不良のためキャンセルなり、リベンジ講話となりました。その体調不良というのが、癌。講話の直前に癌がわかった。その後闘病生活に入る。喉の近くの癌のため切ることができず、五年生存率は5%。人生には終わりがあると突きつけられた瞬間だった。放射線33回、点滴による抗がん剤治療を毎月する中で、倫理法人会の仲間、バリに住む恩師のアドバイスで、さまざまな治療や代替え療法の結果、4ヶ月経った現在癌が消えているという。
橘さんは仕事でシンガポール生活が長く、そこで日本とは違う習慣に出会う。大手メーカーで現地法人を立ち上げる使命を受けて、現地の方の中で奮闘した経験を持つ。シンガポールで付き合った現地の方、いわゆるシンガポール華僑の方は、こちらの要望に必ず「できる(can)」と答える。
しかし頼んでみると全く素人同然。しかし彼らにはノーはない。ノーと言ったら、その先はない。canと言ってなんとかすることで成長する。それが彼らの生存戦略。我々日本人は不確定要素があること、知らないこと、やりたくないことは「できない」ということが多くないだろうか?
華僑四つのFがあるという。
- フッド(FOOD) 稼ぎ
- ファミリー 家族(特に教育)
- フレンド (人脈)
- ファースト ファスト 早く動く
このFを信条とするシンガポール華僑に揉まれて、日本との格差を感じるとともに、ノーと言わない逞しさを身に付けたという。
そして癌の体験を語ってくれた。
癌になれてありがとう。
入院して一番ありがたさを感じたのは、看護師さんの献身的な対応だった。夜中の3時、同じ部屋で寝ていた男性が、5分おきにナースコールを押す。その度に夜勤で疲れているはずのナースはやってきて対応している。なんと迷惑な。横で聞いていた橘さんが、いい加減我慢できないと思った何回目がの時、20代と思われるその看護師さんは言った。
「呼んでくれてありがとう」
衝撃的だった。
シンガポールで学んだのは、勇気と度胸ができない壁を乗り越える技術。できないと言わない。正に信成万事、そうであることを信じるのではない、信じたとおりにさせる。そして闘病から学んだ、本当のありがとう。死を覚悟したからこそ、日常の、迷惑とも言える現実をも有り難いという、看護師さんの言葉が心に響くのかもしれない。
何一つ当たり前のことなんてない。きっとその境地が、癌をも遠ざけたのではないか。学んでいる人はそう口にするが、本当に心から実感している人がどれだけいるだろうか。とても同じ境地に立つことは難しいと思う。しかし同じ学びを共有した仲間の言葉は、恩を忘れかけた時、きっと甦ってくるに違いない。
専任幹事 内山 聡 記
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