第608回 平塚市倫理法人会経営者モーニングセミナー
テーマ:『 二宮尊徳に学ぶ現代日本の危機の処方せん 』二宮尊徳は、道徳的に優れていただけでなく実践の人
講師:元神奈川県開成町長 露木 順一 氏 (株)ジェイ・エス・エス 参与 神奈川大学法学部 非常勤講師
今回のモーニングセミナーは、外部講師として前神奈川県開成町長を務めた露木 順一 氏をお招きしてお話いただきました。
みなさんは、昨年12月にアフガニスタンで武装勢力に襲われて亡くなった医師、中村 哲さんをご存知だと思います。でも、彼が灌漑工事を行っていたことをご存知ですか? 2000年アフガニスタンは大干ばつに襲われ、餓死寸前、飢餓状態の人が500万人。この惨状を見て中村さんは医療支援から水路の建設に軸足を移したそうです。医者は体は治せる、でも飯が食えなきゃどうしようもないじゃないか!「病気は後で治せる。とにかく今は生きておれ」と灌漑工事にまい進します。
灌漑工事と言っても、近代技術は使えない。戦後間もなくの様な人海戦術でやるしかない。そんな状況で中村さんが採用したのは江戸時代のやり方。昔の技術の中に、今のアフガニスタンの人々を救える技術があることに気づきます。アフガニスタンは石の町。その石を活用して現地の農民と共に水路の建設を綿密な計画の元、推進しました。
言葉にしてしまうと大した事に聞こえないかもしれませんが、10数年に渡り地道に人手で行うのは至難の業。そんな中村さんを行動に駆り立てた精神的な原動力、座右の書は内村鑑三の『後世への最大遺物』だったそうです。露木氏はこう述べています。
『後世への最大遺物』では、立派に生きた人生そのものが誇るべき遺産であることを熱く語っている。クリスチャンである中村さんがこの書に心を揺さぶられ喚起され、世のため人のために生きるという高い志を立てたであろうことは想像に難くない。中村さんは、書を紐解くだけの人ではなく実践の人であった。苦難をものともせずに実践の場を求めてアフガニスタンに渡ったことは間違いない。
一方、二宮尊徳は、600に及ぶ農村の再興をその地の農民と一緒になって成し遂げた人。そのやり方は、長期計画と綿密な財政計画、小さな成功実例を積み重ねる「積小為大」が特徴。露木氏は、「身を挺して大義のために立ち向かう高い志を堅持し合理的・科学的精神を持って現状を変革していく実践力。高い志と合理的精神、この両者を併せ持つ人材」だと評価します。
中村さんと二宮尊徳の共通点。2人は、荒れた農村の復興事業に生涯をかけた。水路を整え食料を生産できるようにし民衆の暮らしを豊かにした。高い志と実践力を兼ね備えた人物であること。
高い志は理屈じゃない。合理的な精神に基づいた実践力がこれからは求められる。精神論だけでは駄目。志と実践が必要! それぞれの会社は小さくても、「やれることは何か?」を我々は考えて、実践できるかが問われている。ここで踏ん張らなくていつ踏ん張るんだ? チャンスを与えられていると覚悟して、我々は臨んでいかなければならない。「自分が、自分が、」では駄目だよとコロナは教えている。儲けることも大切だが、生き様が世界の人々の心を揺さぶる。生き様の結果として儲けることも同時にあるところを本気で模索する時代がやって来た。転換期はここから30年。縮こまることなく、前を向いて挑戦を続けて行こうではありませんか! と締めくくりました。
このお話をお聞きして、私は改めて実践する事の大切さを感じました。倫理でも万人幸福の栞の16ページに、「この倫理は、宗教でも思想運動でも、空想でも理論でもありません。皆さんは、先ずこれを読んで、理屈なしに行ってください。きっと変わった結果が出て来ます。」とあり、実践に重きを置いています。私は倫理に入会して約1年9カ月ですが、最近になってやっと実践の大切さに気づき始めました。私の解釈では(間違っているかもしれませんが)、実践とは人から言われてその通りにすることではない。本を読み、人の話を聴き、役職を経験し、それらを通して自分の内側に生ずる気づきに駆り立てられて行動に移すことだと思っています。これからも皆様と共に、励まし合いながら実践を続け、共に益々発展していけたら良いなと強く感じています。
今回も素晴らしい気づきをありがとうございました。
幹事 安藤 文逸 記
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